2017年4月2日日曜日

「古楽でめぐるヨーロッパの古都」  by 渡邉温子 2016年7月出版


 筆者はチャンバロの演奏家。旅が好きで、この本は訪れた街の古楽についての紀行文になっています。
 古楽というとイタリアをまず思い浮かべるのですが、この本では、スペインやメキシコまで取り上げられているのがユニークでした。「セビリアの大聖堂」で鳴り響いていたアラオホ、モラーレス、ゲレーロ、「プエブラ大聖堂」で鳴り響いていたパディーリャの音楽が気になったので、聴いてみようと思います。
 音楽は、幅広く取り上げた筆者に敬意を表して、ドイツのオペラであるカイザーの「クロイソス」にしました。聴くのは久しぶりです♫

●目次
第1章 ザンクト・ガレンースイス修道院に聖歌がひびく
第2章 ニコシアーキプロス 地中海の果てのフランス
第3章 アントウェルペンーベルギー 交易と商業で栄えた街
第4章 リューベックードイツ「夕べの音楽」とハンザ都市
第5章セビーリャ スペイン 新世界に開かれた街
第6章 プエブラ メキシコ インディオの聖歌隊
第6章 クレモナ イタリア ヴァイオリン制作の聖地
第7章 ツェルプスト ドイツ 歴史に翻弄された街
第8章 マンハイム ドイツ モーツァルトの就職活動
第9章 ヴェルサイユ フランス 太陽王が創造した宮殿
第10章 ヴェネツィア イタリア 聖俗が交錯する街

シベリウス 劇音楽「テンペスト」

 あまり聴かれることがないシベリウスの劇音楽「テンペスト」(全曲)を聴いてみました。録音は、70年の時空を越えて蘇るオリジナル版でデンマーク語による世界初録音だそうです。

 最初の嵐のシーンは、良く出来ていて、序盤で物語に引き込む力があるインパクトのある音楽でした。全体的にメルヘンチックな響きがして、楽しい気持ちになりました。ただ映画の劇伴のような音楽で、映像がないと少し退屈かもしれません。合唱や歌がところどころ入っていたので、なんて歌っているのだろうと気になりました。

 音楽のお供に、2016年に出版された新訳の「テンペスト」を読みました。登場人物やあらすじが入り組んでいて1度通読したたけでは分かりにくかったですが、「精霊」たちがでてきたり、裏切られたものによる「赦し」がテーマになっています。アーサーラッカムの挿絵がとても夢夢しいです。
<Disk 情報>
 1925年に作曲されてから数回しか演奏されていないシベリウスの『テンペスト』。オリジナルのデンマーク語は、貴重。フィンランドの新鋭サラステ。シベリウスのこの作品から新しい生命を導き出しています。ソプラノのグロープ、バリトンのヒュンニネンを始めとする歌手陣も超豪華。(キングインターナショナル)
シベリウス:劇音楽『テンペスト』 Op.109(全曲)
 (オリジナルのデンマーク語による世界初録音)
 モニカ・グロープ(S)
 ライリ・ヴィリャカイネン(S)
 ヨルマ・シルヴァスティ(T)
 ヨルマ・ヒュンニネン(Br)
 サウリ・ティーリカイネン(Bs)
 オペラ・フェスティヴァル・コーラス
 フィンランド放送交響楽団
 ユッカ=ペッカ・サラステ(指揮)




バルトーク歌劇「青ひげ公の城」

 
 音楽仲間の紹介で、バルトークの歌劇「青ひげ公の城」を聴きました。青ひげ公の城はあらすじだけ頭にいれて、以前聴いたことがあるのですが、今回はバラージュ・ベーラの台本を読んでみました。
 ユディットという女性は、父母、兄弟、許嫁すら捨てて、自分の意思で青ひげの城に来たのですね。青ひげの城の、しめった壁をかわかし、冷たい石をあたため、窓を開け日の光を指すために。
...
青ひげは7つの扉を持っていて、ユディットの求めに応じて、ひとつひとつ鍵を開けていく。
 第1の扉は「拷問部屋」。第2の扉は「武器の部屋」。第3、4の扉は「宝石」「花園の部屋」。第5の扉は「広大な領地の部屋」。どの部屋にもなぜか血痕がついている。第6の扉は、静かな白い湖が見え、それは「涙だ」と青ひげは言う。ユディットは今まで愛した女が殺されたのではないかと疑う。そして最後の第7の扉を開けると、青ひげかかつて愛した朝の女、昼の女、夕方の女が着飾って閉じ込められていた。青ひげはユディットを夜の女だといい、ユディットをとじこめ、第7の扉がしまり「もういつまでも夜だ・・夜だ・・夜だ・・」と青ひげがつぶやき幕となる。
 とても短いお話だったのですが、いろんな疑問が沸くお話でした。ユディットは青ひげを「救う」ために、身内を捨てて城までやってきたのか、「血痕」の意味は、青ひげの権力と富は虐げられている民の犠牲のもとに成り立っていると解釈するのか、なぜ女達が第7の部屋に閉じ込められているのか、征服しても人形のような女達に青ひげは安らぎや愛を見いだせるのか、最後に青ひげが「夜だ、夜だ」とつぶやいたことは、青ひげはユディットを閉じ込めたことを本当は望んでいなかったように聞こえ、もう自分を救ってくれる女は現れないという絶望の意味なのか等とても謎めいたところのあるお話でした。
 アルバムは、私はオッターが好きなので、オッターがユディットを演じた盤にしてみました。
1時間のオペラですが、起伏があって素晴らしかったです。広大な領地のシーンは、ワーグナーのような壮麗な音楽でした。
ベルナルト・ハイティンク指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Ms)ジョン・トムリンソン(Bs)シャンドール・エレース(語り)

2017年4月1日土曜日

☆マーク・パドモアが歌う、シューベルト連作歌曲集「美しき水車屋の娘」 in いずみホール



昔からファンだったパドモアさんの歌う「美しき水車屋の娘」を聴きに行ってきました。普段はポール・ルイスのピアノ伴奏のアルバムを聴いていたので、今回のティル・フェルナーさんの伴奏は雰囲気が違い最初は戸惑いましたが、徐々に慣れてきました。パドモアさんの表情や動きを近くで拝見することで、あぁこの曲は甘くせつない歌なんだなとか、怒りに満ちた場面なんだなとか、臨場感を持って聴くことができました。ピアノの伴奏も一体化して溶け合っていました。最後の「小川の子守唄」を歌うときパドモアさんはピアノから少し離れて移動したことは、主人公がなくなかったことを表したいのかなと思いました。

アンコール曲は歌われなかったのですが、繰り返しの拍手とブラボーに答えて、何ども再登場してくださいました♫ピアノ一台と歌手一人だけで、こんなにお客さんを酔わせることができて、すごい歌い手さんだなぁと改めて思いました。

2016年12月23日金曜日

2016 心に残った音楽作品&アルバム 声楽編


 
今年も素敵な音楽作品&アルバムにめぐり合いました。まずは声楽編から♪
●パーセル歌劇「アーサー王」(英語)クリスティ指揮
バロックオペラを愛する友人の紹介で聴いてみました。最後に王を称える合唱が恍惚とします。



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●リュリ歌劇「ベレロフォン」(仏語)ルセ指揮
リュリのオペラの中でも合唱の割合が大きく、フランス語の美しい響きに酔いました。





●ヴォーン・ウィリアムズ歌劇「天路歴程」(英語)ヒコックス指揮
英国音楽を愛する友人の紹介で聴いてみました。ジョン・バニヤンの著作「天路歴程」が原作で、英国圏では聖書の次に読まれている物語です。主人公がさまざまな困難を乗り越えて、天国の扉が開かれ、ハレルヤの合唱で迎えられるシーンがうっとりしました。
●オネゲル劇的オラトリオ「火刑台のジャンヌダルク」(仏語)スーストロ指揮
主人公のジャンヌは歌わず俳優が演じている構成がユニークなのと、野獣に裁かれる異端審問のシーンが面白かったです。フランス語もとても美しかったです。




●ブリテン歌劇「カーリュ・リヴァー」(英語)ブリテン指揮
能の「隅田川」をオペラ化した作品です。西洋楽器を使っているのですが、日本の和楽器のような響きが感じられた珍しいオペラでした。小編成のアンサンブル構成が、もともと簡素な能の原作のイメージを壊さず合っているなと思いました。4月末、NHK「古典芸能への招待」で「隅田川」を取り上げていただき能を鑑賞することができました。能とオペラ、両方を知ることができて良き年でした。
●サーリアホ歌劇「遥かなる愛」(仏語)ケント・ナガノ指揮
12世紀フランスの偉大な吟遊詩人ジョフレ・リュデルの『La Vida breve』が原作。遥かなる恋人に逢うために海を渡った主人公が航海の途中病気になり、恋人に抱かれて死ぬ悲しい恋物語です。古典の原作と現代音楽の融合がマッチしていて、色彩感のある美しいオペラでした。来年1月にMETでライブビューイングで放映されます。

 


もう聴いたことがある作品ですが、アルバムで良かったものが2つありました。
●ワーグナー歌劇「ラインの黄金」(独語)ラトル指揮
音質がクリアで臨場感があり迫力満点でした♪
●モーツァルト 歌劇「後宮からの誘拐」(独語)セガン指揮
モーツァルトのオペラに必要な活き活きとしたテンポ感があり、楽しめました。
歌曲
●ブラームス:歌曲集(フィンク/ヴィニョールス)
ドイツのリートは色々聞いてきたつもりだったのですが、ブラームスはあまり聞いた事がなかったことに気づきこのアルバムを聴きました。ブラームスの歌曲は素朴で暖かく美しいメロディーに溢れた歌曲ですね。「五月の夜」「メロディのように」がお気に入りです。
 
 
 
 
 
 
 

2016 心に残った音楽作品&アルバム 器楽編

<器楽作品>
今年は器楽作品をあまり開拓できなかったのですが、印象に残った作品をいくつか挙げてみます。
●ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ/ルトスワフスキ:スビト /パルティータ/シマノフスキ:神話(ファウスト/クピーク)
ヤナーチェクのヴァイオリンソナタは独特の響きがして印象深かったです。器楽にも彼がこだわったモラヴィア語法というものが反映されているのかしら、そんなことが気になりました。
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●1920年代のフランスのバレエ音楽(フィルハーモニア管/サイモン)
「ジャンヌの扇」いう曲がとても華やかでした。パリの情景が思い浮かぶようでした。フランス6人組の合作というのがユニークで面白かったです。








●ドビュッシー:弦楽四重奏曲/デュティユー:夜はかくの如し/ラヴェル:弦楽四重奏曲(アルカント弦楽四重奏団)
●バルトーク:弦楽四重奏曲第5番, 第6番(アルカント弦楽四重奏団)
室内楽を愛する友人に「アルカント弦楽四重奏団」を紹介していただきました。フランスの弦楽四重奏曲の繊細な響きが演奏から伝わってきてとても感動しました。バルトークは独特の響きがしてユニークでした。







●ベートーヴェンピアノソナタ集4第5番-第7番, 第15番「田園」, 第19番, 第20番, 第26番「告別」, 第30番 - 第32番(Pルイス)
今年はベートーヴェンのピアノソナタの楽譜を買っていろいろ聴いてみました。その中でも30番が大好きになりました。特に第3楽章がいろんな表情のある変化に富んだ楽章で、なおかつロマンチックな響きがして感動しました。









●武満徹:鳥は星形の庭に降りる/夢の時/星・島/オリオンとプレアデス(ワトキンス/BBCウェールズ・ナショナル管/尾高忠明)
今年は武満徹没後20周年にあたり、立花隆が執筆した武満さんの本を読んだり、武満音楽を聴きました。「鳥は星形の庭に降りる」という作品は武満さん自身のお気に入り曲であり、武満さんが好きな愛好家からの紹介曲でもあります。武満さん独特の響きと、幻想的でロマンティックな雰囲気の曲で好きになりました。
 
 
 
 

2016年12月11日日曜日

小山由美 ドイツ歌曲研修Ⅱ inびわ湖ホール

少し前になりますが、小山由美先生の「ドイツ歌曲研修Ⅱ」を聴講してきました。

 小山由美先生は、ワーグナーの歌い手として知られていますが、最初はドイツのリートを歌われていたそうです。この講座は、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーが、まず自分の課題曲をピアノの伴奏とともに歌い、その後、先生が細かい指導をし、最後に又歌を歌うという声楽の公開レッスンです。

  私はドイツ語をはじめたばかりで、ドイツ語の発音や詩の解釈、リートの歌唱法、リートに適したピアノの演奏の仕方など、専門的な内容でわからない部分もありましたが、本で学習しているだけでは得られない貴重な指導を拝見することができました。リストの「ローレライ」とブラームスの「メロディのように」は実演で聞くと本当に綺麗な歌でうっとりしました。
 来年は、ワーグナーとヴォルフの歌曲等を取り上げるそうです。

 また改めて指導内容をまとめたものを公開します。


 びわ湖ホールは音楽教育に力を入れており、さまざまな公開講座が催されています。へんぴな場所にありますが、沼尻先生の「指揮法セミナー」など得るものが大きいです。びわ湖ホールの今後の活動に注目していただけると嬉しいです(びわ湖ホールのファンより♪https://www.biwako-hall.or.jp/

講 師:小山由美(メゾ・ソプラノ)
受講者:びわ湖ホール声楽アンサンブル・メンバー
課題曲:
【11/28(月)】
シューベルト
 ・歌曲集「美しき水車小屋の娘」より「知りたがる男」、「邪悪な色」
 ・歌曲集「冬の旅」より「菩提樹」
カール・レーヴェ
 ・詩人トム
ベートーヴェン
 ・自然における神の栄光


【11/29(火)】
メンデルスゾーン
 ・ズライカ
 ・恋人よ、打ち明けておくれ
 ・挨拶
シューマン
 ・歌曲集「詩人の恋」より「うるわしい、妙なる五月に」、「ぼくがきみの瞳を見つめると」、「ぼくは恨みはしない」
 ・歌曲集「女の愛と生涯」より
 ・歌曲集「メアリー・スチュアート女王の詩」より

【11/30(水)】
リスト
 ・ローレライ
ブラームス
 ・五月の夜
・メロディーのように
 ・私の眠りはますます浅くなり
 ・教会墓地にて
 

「古楽でめぐるヨーロッパの古都」  by 渡邉温子 2016年7月出版

 筆者はチャンバロの演奏家。旅が好きで、この本は訪れた街の古楽についての紀行文になっています。  古楽というとイタリアをまず思い浮かべるのですが、この本では、スペインやメキシコまで取り上げられているのがユニークでした。「セビリアの大聖堂」で鳴り響いていたアラオホ、モラーレス、...